大阪社保協FAX通信 第1098号 2015.3.16
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4月から大阪府域地方税徴収機構がスタート。開示請求した会議資料から内容を読み解き今後を考える。
大阪府は昨年12月、2015年4月から大阪府と府内市町村共同で「大阪府域地方税徴収機構」をスタートさせることをマスコミ発表しました。大阪社保協では大阪府に対して昨年の検討会議全資料を開示請求し、先週公開させました。ここでは、大阪府が全国の「徴収機構」について詳しく調査している内容や考え方が詳しく示されています。大阪府の資料を読み解きながら、4月からの私たちの取り組みについて考えてみたいと思います。
★検討経過
以下が1年間の検討経過です。如何に集中的にかつ積極的に検討を進めてきたかがよくわかる日程となっています。
□2月7日 市町村税務担当部長会議
□3月20日 第1回大阪府域地方税徴収機構(仮称)検討会
□4月24日 第2回大阪府域地方税徴収機構(仮称)検討会
□5月8日、14日 府市長会、府町村長会定例会で報告
□5月22日 第3回大阪府域地方税徴収機構(仮称)検討会
□6月12日 第1回組織体制分科会
□6月19日 第1回運営体制分科会
□6月27日 第2回組織体制分科会
□7月3日 第2回運営体制分科会
□8月6日 第4回大阪府域地方税徴収機構(仮称)検討会
□11月10日、17日 府市長会、府町村長会定例会で報告
★他府県の徴収機構についての調査報告
2月7日の市町村税務担当部長会議で他府県の徴収機構の現状について報告されています。
□2014年12月現在の設置状況 順番は設置が古い順 数字は参加自治体数/全自治体数
・広域連合 3 (静岡県35/35、京都府25/26、長野県77/77)
・一部事務組合 7 (茨城県44/44、三重県29/29、和歌山県30/30、徳島県24/24、愛媛県20/20、青森県32/40、高知県15/34)
・任意団体 20 (香川県12/17、岩手県33/33、栃木県27/27、千葉県55/55、山梨県27/27、滋賀県19/19、宮城県25/35、岡山県27/27、広島県23/23、福井県17/17、佐賀県17/20、群馬県30/35、新潟県29/30、長崎県21/21、秋田県25/25、*福島県13/13、鳥取県19/19、*北海道8/11、*石川県3/3、愛知県48/54、) *については地域段位での参加市町村数を記載
合計30道府県
□ 広域連合・一部事務組合・任意団体の違い(大阪府資料より転載)
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広域連合 |
一部事務組合 |
任意団体 |
法的根拠 |
地方自治法第291条2〜291条の13 |
地方自治法第281条〜291条 |
法規定なし、市町村と協定書締結 |
設置目的 |
多様化した広域行政に適切かつ効率的な対応 |
事務の一部の共同処理を行う |
事務の一部の共同処理を行う |
制度概要 |
・広域にわたり処理することが適当と認められる事務を行う(徴収事務以外の業務拡大が可能) ・都道府県が担う事務と市町村が担う事務の共同処理が可能 ・総務省の許可が必要 |
・事務の一部を共同して処理するために設ける ・都道府県の参画は直接参加する場合と側面支援の場合有 ・都道府県が直接参加する場合は総務省の許可が必要 |
・都道府県と市町村の協議により設置(市町村と協定書等の締結が前提) ・県と市町村職員の相互併任制度を活用し、共同処理職員を確保 |
法人格 |
有(特別地方公共団体) |
有(特別地方公共団体) |
有しない |
組織 |
執行機関、議会、監査委員会、選挙管理委員会が必要 |
執行機関、議会、監査委員会、選挙管理委員会が必要 |
有しない |
議会 |
広域連合議会を設置 |
一部事務組合議会を設置 |
有しない |
費用負担 |
運営経費(システム導入経費含む)を県と市町村で分担 |
運営経費(システム導入経費含む)を県と市町村で分担 |
事務経費(郵送費等)を県と市町村で分担 (システムの導入例は無) |
*法人格をもつ広域連合と一部事務組合には差押え等の権限は広域連合長や組合長にありますが、任意団体の場合は権限は市町村長にあります。
□ 他府県調査結果(大阪府資料より転載)
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京都府(広域連合) |
静岡県(広域連合) |
茨城県(一部事務組合) |
和歌山県(一部事務組合) |
愛知県(任意組織) |
岡山県(任意組織) |
設立背景等 |
知事から府内市町村へ共同化を要請 ⇒税務共同化委員会設置 |
県と市町村の課税と徴収一元化を目指す「徴収地方税一元化構想」を具体化 ⇒地方税一元化連絡会設置 |
学識研究者等で構成する自主財源充実検討会から事務共同化提言受ける ⇒設立準備室設置 |
県、市町村連携会議で徴収業務共同化を県、市町村が共同提案 ⇒設立研究会設置 |
・1地域から共同化の知事要請有 ・当ブロックで研究会設置 ⇒市町村税務課長会議でブロック単位検討確認 |
税源移譲の影響を踏まえ、県と市町村で構成する税収確保会議で県から提案 |
機構業務及び構成職員(H24) |
・徴税、法人関係税課税事務 ・職員247名(府126名、市町村88名、他) |
・徴収、軽自動車税申告関係事務 ・職員32名(県32名、市町村14名、他) |
・徴収事務 ・職員40名(県8名、市町村22名、他) |
・徴収事務 ・職員20名(県4名、市町村10名、他) |
・徴収事務 ・職員61名(県12名、市町村49名、他) |
・徴収事務 ・職員14名(県5名、市町村7名、他) |
今後の方向性 |
今後、課税事務(評価等)の共同処理する方向手背機構内に検討課を設置 |
平成28年度以降の次期広域計画策定時に、個人住民税税額試算、申告書作成支援システム導入検討 |
徴収事務は今後も継続予定 |
市町村と適宜協議の上、設置期間延長判断 |
平成23年〜平成25年の取り組み状況を踏まえ存続判断 ⇒平成26年度から3年間は延長合意 |
平成21年〜平成24年の取り組み状況を踏まえ平成25〜27年まで3年間延長合意 |
□ 他府県調査結果(大阪府資料より転載)
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引受業務等 |
年間運営経費(公表分) |
実績 |
京都府 |
○原則、市町村税及び府税全税目を全権引き継く(督促状発付後に引継。期別ごとに引継) ○H24年4月〜徴収業務に加え法人関係税の課税事務の開始(事務局法人課の設置) |
○機構一般会計予算 19億92百万円 (府12億円、市8億円) ・人件費75% ・事務経費、システム運営費25% (H24年度実績) |
H24年度 【引継額】272億円 ⇒【徴収額】118億円 ≪引継分の徴収率≫ H24年度 43.2% H23年度 40.8% H22年度 34.8% |
茨城県 |
○全市町村税、国民健康保険料(市長村税に名寄せされるものに限る) (大口累積事案、不動産購買事案、管外滞納事案、徴収困難なもの) ○平成24年〜機構内に住民税対策課を設置 |
・均等割額 5万円 ・処理件数割額 12万円/件 ・徴収実績割 全前年度実績10% 以上を市町村負担金で徴収 |
H24年度 【引継額】32億円 ⇒【徴収額】12億円 ≪引継分の徴収率≫ H24年度 集計中 H23年度 36.8% H22年度 31.4% |
愛知県 |
○県を6ブロックに分け、愛知県東尾張地方税滞納整理機構等を設立し、設置期間は3年 ○県税事務所兆社内に機構設置 ○原則、個人住民税滞納事案を引き継 ぐ |
○ブロックごとに協議(経費負担等の割合等は非公表) ○事務経費部分(車両リース代、郵便代等)を参加市町村で按分(均等割、件数割) ○件は兆社の提供や人的支援を中心に参画 |
H24年度 【引継額】52億円 ⇒【徴収額】28億円 ≪引継分の徴収率≫ H24年度 55.4% H23年度 53.3% |
★大阪府域地方税徴収機構はどのような組織となるのか
□運営形態
「任意団体」として発足。よって、滞納処分や徴収猶予、換価の猶予、滞納処分の停止などの権限は徴収機 構にはなく、市町村にある。設置は平成27年度から3年とし、検証を行い、その後の取組体制を参加団体と協議。また、会議資料中には、「任意団体」からその他団体への変更も今後検討と記載あり。
□機構の運営(府内43市町村中25市2町が参加)
○本部は大阪府財務部財務局に置く。
○北支部(大阪府なにわ北府税事務所)に参加するのは大阪市、吹田市、豊中市、箕面市、八尾市、柏原市、守口市、寝屋川市、大東市、門真市、四条畷市、交野市。
○南支部(大阪府泉北府税事務所)に参加するのは堺市、泉大津市、和泉市、高石市、岸和田市、貝塚市、泉佐野市、阪南市、富田林市、河内長野市、羽曳野市、大阪狭山市、松原市、太子町、河南町。
□職員派遣
○大阪府税職員と市町村からの出向で40〜47人。府職員12−15人、市町村職員28−32人
○4月から翌年3月までの1年間
□引継見込件数
4000件/年、42億円を予定
*市は1団体あたり150件、町は1団体あたり80件で件数及び税額を計算。
□引継処理事案の選定
○個人住民税、固定資産税、軽自動車税、法人市民税、その他市町村民税
○市町村民税に名寄せされる国民健康保険料(税)も含める
○原則、個人住民税単独は30万円(町村は別途設定)以上、他税目は単独で100万円以上について引継基準を設定する。なお、処理困難事案は、機構との事前協議を前提とし、財産がないもの、所在不明など引継時点で収入が見込めない事案は対象外とする
□滞納処分の基本方針
○滞納整理の基本方針等は、あらかじめ運営要領等に盛り込むことが必要。停止等のガイドラインについても、市町村側と設定までの間協議を行うこととすると記載。
○差押え等を行うための決裁方法については任意団体の場合、滞納処分の権限をもたないため各市町村において決済を行う。機構で決定した処理を尊重し、速やかに事案元の参加団体で決裁を受けるルールの策定が必要と記載。(例:電子メールの活用や代決、事後決裁等)
○緊急時の債権(預金等)差押え等に対応できるよう、参加団体においては、徴税吏員の権限で差押えを執行できる事務処理に変更するための町内調整をお願いしたいと記載。
○機構で停止処分相当と判断した事案は機関途中であっても返還。
★何のための機構設立か〜会議資料から読み解く
○他府県の調査の中で、機構設立によって、引継案件の徴収率が高いことや年々上がっていることが強調されている。
○さらにアナウンス効果があることやブランド効果(?)について書かれている。つまり、「大阪府域地方税徴収機構」という仰々しい名前に府民がびっくりして納付するという効果を期待している。
○さらに、府税職員による市町村職員の研修効果により滞納整理業務のスキルアップを目指している。
○また、滞納処分の統一的な府的ルール確立も目指している。
○現在は権限のない「任意団体」だが、権限をもつ「広域連合」や「一部事務組合」へに移行も検証の中で浮上してくる可能性もある。
★徴収機構であってもこれまでどおり法令順守しているかどうかの監視を
2月に和歌山県地方税回収機構について話を聞く機会がありましたが、「市町村から選ばれた悪質な案件が引き継がれているので、機構にきた事案については相談をうける必要はない」「機構では一切事情は聞かない」というスタンスであるということでした。また、「機構で取り扱って差押えされた事案についてはたとえ停止事案であっても解除しない」と一方的に拒否するケースもあると聞きます。
徴収機構に権限があろうと市町村に権限があろうと、滞納処分の法的根拠は同じであり、法令を守らなければならないことは当然のことです。いかに法令を守らせるか、違法行為をしていないかどうかの監視が必要です。大阪社保協からは、さっそく徴収機構の担当課である大阪府税務部税務局徴収対策課に「その差押え、違法です!」を送付しました。
★大阪社保協滞納処分問題対策委員会を設置
滞納処分によって暮らしや商売が破壊されるなどもっての他です。大阪社保協では2015年度、滞納処分問題対策委員会を設置し、大阪だけでなく、全国にむけても、情報発信、運動提起をしていきます。