大阪社保協FAX通信   1004号 2012.4.24                                        

「いのちよりカネ」「給付より収納」は四條畷市だけではない〜摂津市でいま何が起きているのか。

 この間、四條畷市の法令無視の国保行政について告発し、そして大きな取り組みをすすめてきたのですが、こうした「いのちよりカネ」「給付より収納」という行政はもちろん四條畷市だけではなく、各地で具体的に表れています。

 本日は、摂津社保協・増永さんより「摂津市の変貌」として寄稿がありましたので、以下そのまま掲載します。

 

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摂津市の変貌

今はこれだけしか払えないと懇願しても、こんな額では滞納金が膨らむばかりだと高額な返済を迫られる。夜も滞納金の取立てに悩まされる。払わなければ職場に連絡すると脅される。子どもの通う保育所で待ち伏せされる。そして遂になけなしの預金を押さえられてしまった―これは、サラ金やヤミ金の話ではありません―

 

急激に増えた差押

国保料や市民税の差押が増えています。摂津市の場合、国保料の差押は平成1721年度は年間03件、額も数十万円程度だったのに、22年度は一気に54件、額にして37百万円にまで膨らんでいます(大阪社保協資料より)

「振り込まれた給料が差し押さえられた」「口座に入れてあった子ども手当が差し押さえられた」「失業中の市民税の滞納分として延滞金や督促手数料まで乗せて預金が差し押さえられた」というケースさえ。今までにない事態が進行していると、摂津社保協として摂津市に対し情報公開請求をしたところ、22年度に「滞納整理部会」なるものが立ち上げられていることがわかりました。

 

滞納処分は行革の一環―ALL摂津で取り組め

平成22528日付「第1回滞納整理部会議事録」を見ると、出席者には総務部次長はじめ納税課・介護保険課・下水道業務課・こども育成課・国保年金課・政策推進課の課長らの名前が並びます。総務部次長があいさつで激を飛ばします。「行革の進行管理は担当課だけではできないため、ALL摂津で取り組まないといけない。」

滞納整理部会設立は摂津市第4次行財政改革(H2226)の一環でした。第4次行革の「実施計画」を読むと、第3次までにはなかった「歳入改革」が5本柱のひとつになっています。第3次までで歳出削減はやってきたが、次の課題は歳入を増やすこと。しかし「実施計画」でも認めているように「法人市民税が(中略)減収となるとともに、今後、急速な景気回復が見込めない中、個人市民税についても大きな減収が見込まれる」状況です。

そこで、「(1)債権管理」と「(2)適正な受益者負担」で歳入を増やそうというわけです。「債権管理」の項目で、今まで税では行なってきた「納税交渉や財産調査、差し押さえ、公売等様々な対応」をその他債権でも実施するとされています。これを受けて滞納整理部会が設立されたのでした。

 

現状でも強行な取立てが―

2回滞納整理部会(822)には議事録だけでなく、現在の各課による滞納者への取組み状況報告資料が出ているのですが、現状でもかなり強行な取立てをしていることが伺えます。

たとえばこども育成課では、保育料の滞納者に「保育所に児童が在園している世帯に対しては、夕方の迎えの時間帯に保育所で待ち受けて、保護者と面談を実施している。」とあります。「文書にて納付の誓約書がとれるため、時効の中断が図れる」という「効果」があるが、「課題」は「当初は支払いに応じるが、滞納体質は根本的に改善されていないため、再度滞納額が膨らんで行く世帯がある」ことだとしています。こどもの気持ちや他の父母、保育士との関係への配慮については記述がありません。「現在の生活状況の把握や今後の納付方法について、話を進めることができる」とは書かれていますが、困難な生活状況に寄り添ってどう対応するかということは抜きに「滞納体質」という言葉が出てきます。

 

滞納整理部会の本質は何か

「第4次行革実施計画」では、「十分な支払い能力を有しているにも関わらず、納付をしない滞納者」「このような不誠実な滞納者」に対し「毅然とした対応が強く求められます。」と書かれていますが、滞納整理部会でどのような滞納者が「不誠実な滞納者」かという議論はなされていません。「実施計画」には「また本市の財政状況は、依然として厳しい状況にあることからも、収入未済を縮減し、歳入の確保を図っていかなければなりません。」とも書かれています。滞納処分の目的は、「不誠実な滞納者」の取締りというよりも歳入確保に重点がおかれているのではないでしょうか。

そう思わせるのが、介護保険課の変化です。介護保険課は第1回部会で「福祉的な側面が強く、所得が年金受給のみの人や非課税になっている人も多いため、滞納処分等にはなかなか踏み切れていない。」と発言していました。介護保険料が滞納になるのは、基本的に年金が月額15,000円未満の人です。それ以上だと年金から天引きされてしまいます。介護保険料が滞納になるのは、払わないのではなく払えないからです。介護保険課は滞納する人の状況がわかっているのです。ところが、第2回に提出された報告書では「(滞納者には)保険給付の制限の措置を講じることにより、一定の公平性が担保されている」ため、今まで滞納処分をしたことはないが、「更なる公平性を確保するため」「滞納処分を実施することについて検討が必要です。」と書かれています。滞納整理部会を通じて介護保険課の姿勢が大きく変わったのではないでしょうか。

納税課の文書からはもっとはっきりこの部会の本質が伝わってきます。滞納整理の第一歩は「早期着手」」だとして「滞納の事実を知らしめ言い逃れの機会を与えない」、「滞納が増加する少額分納」については「安易な分納は受け入れない」と明確です。

 

差押の完結店は、トル・オサエル・オトス。

3回部会(123)は納税課主導の生命保険差押のケーススタディです。「滞納整理の完結点は、トル・オサエル・オトス。」など、納税課の表現は一層露骨になっていきます。

現在はまだ差押をしていない課も、「市外転出者について、有効な滞納整理を教示願いたい」(こども育成課)、「普通預金の差押を検討しているが、具体的な手順を記した要綱があればいただきたい」(介護保険課)と積極的になってきていることがわかります。

 

滞納者の個人情報は守らなくてよい?

23225日、滞納整理部会は年度のまとめと次年度の方針を検討。「今部会でケーススタディをしてもらってからは、係員の意識がだいぶ変わり、滞納者応対も前より積極的にできている(こ育)」と評価しています。政策推進課は「そもそも地方税法第22条でいうところの守秘義務は滞納している事実に関しては及ばないと解釈している」と発言。滞納している市民の個人情報など守る必要はないということかと驚きを禁じ得ません。

 

7軒に1軒は滞納世帯

2年目を迎えた滞納整理部会(23年6月7日)では、収納率の向上など数値で「成果」を報告し合っています。もう消極的意見は出ません。滞納者に個人情報保護は必要ないという考えが根付いていることが子育て支援課(旧こども育成課)の発言から分かります。「口頭による生活状況の聴取にとどまり、安易に少額分納を受け入れてしまうため、滞納処分が前提でなくともきちんとした財産調査により、実際の経済状況を把握することが必要だとかんがえている。」市民が口で言ってることなど信じられないということです。市民一般を信用していないわけではないと彼らは言うでしょうか?滞納者は市民の中で特殊な人間なのでしょうか?不況の中で払いきれない税や公共料金に苦しんでいる人は少数ではありません。国保課の言葉はそれを裏付けます。「本市では約5,000世帯の1割が財産調査の対象者であり、そのまた1割が滞納処分の対象者となっている。」摂津市の総世帯数は約35,000世帯、国保加入世帯は約15,000世帯です。滞納世帯の5,000世帯は国保加入世帯の3分の1であり、摂津市の7軒に1軒は国保の滞納世帯ということです。そのうちの1割、約500世帯がすでに財産調査をされていて、そのまた1割の約50世帯が差押をされてしまったのです。国保課はこの約50世帯から3700万円押収し、市の歳入を増やしたというわけです。「不誠実」かどうかなどはもう問題でなくなっていることが伝わってきます。処分される滞納者が今後増えていくことは確実でしょう。

 

 私たちの役割

そもそも個人市民税に「大きな減収が見込まれる」ほど市民の生活が困窮しているときに、行政改革と称して差押などの債権回収で市財政を増やそうとすることが市のするべきことなのでしょうか。

摂津市は財政難でどうしようもなくてこんなことをするのでしょうか?いいえ、摂津市の財政は決して悪くはありません。財政状況が悪い自治体に国から降りる交付金があります。財政状況が良いところには交付されません。大阪府下の市の中で、摂津市は唯一の不交付団体です。財政指数も大阪府下でトップクラスなのです。摂津市の行革実施計画には「経営者の視点」「経営感覚を備えた職員」という言葉が出てきます。摂津市はいつから「経営者」に変貌したのでしょうか。市の収入を増やすことに目の色を変えるよりも、地域経済の活性化や市民の生活の防衛こそが市に求められる仕事のはずです。

 

地方自治法第1条の2には「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として」と明記されています。摂津市に本来の姿を求めていくのは私たち市民の役割です。

 

(摂津社保協が公開請求した資料は236月までですが、部会はこの後も続いています。社保協は再度情報公開請求し、部会の内容を明らかにするとともに、実際に差し押さえされた人の情報なども調べ、摂津市に要望・交渉を行なっていきます。情報をお寄せいただくなど、みなさまのご協力をよろしくお願いします。)

                                                  摂津社保協・増永和起

 

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